STORY &
COMMENTARY
ストーリー&解説

第 1 幕

古代――。ある村に天から舞い降りた七羽の朱鷺が、羽衣を脱ぎ捨て、仙女の姿となって、渓谷で戯れていました。その光景に驚いた村の青年・俊(ジュン)は、中でもひときわ美しい朱鷺の潔(ジエ)に心を奪われ、木の枝に掛かった美しい羽衣を持ち帰ろうとします。慌てて羽衣をまとって飛び去る朱鷺たち。しかし、自分の羽衣を奪われた潔(ジエ)は、羽衣を返して欲しいと俊(ジュン)に頼みます。はじめは、恐れや不安を覚えた潔(ジエ)でしたが、やがて、それは愛となります。

 潔(ジエ)は、俊(ジュン)と一緒に暮らすようになりますが、ある晩、潔(ジエ)は、朱鷺の仲間たちと踊る夢を見て、人間界は自分の居場所ではないと悟り、泣く泣く俊(ジュン)の元を去ることを決意します。そして、眠る俊(ジュン)の傍らに、自らの羽根を一本残し、羽衣をまとって飛び立っていくのでした。

第 2 幕

時の河を越えて、潔(ジエ)がやってきたのは高層ビルが立ち並ぶ近代。しかし、潔(ジエ)は都会に馴染むことができず、すっかり周囲から孤立してしまいます。そんな中、都会の移り変わりをレンズにおさめていたカメラマン・俊(ジュン)が、潔(ジエ)を介抱します。俊(ジュン)は、かつて潔(ジエ)が残した羽根を受け継いでいました。そして、潔(ジエ)の美しい住処を探し出すことを約束します。

 俊(ジュン)と一緒に時の河を越えた潔(ジエ)ですが、もはや潔(ジエ)の故郷も、平和な世界ではありませんでした。文明化に伴い破壊されていく自然、そして次々に絶滅していく仲間たちの姿に、二人はショックを隠せません。俊(ジュン)は、思い出の羽根を取り出しますが、潔(ジエ)は、その羽根を再び俊(ジュン)に贈り返し、飛び立っていきます。

 さらに時が流れ、博物館では、滅びゆく朱鷺のストーリーを学生に伝えています。

 ある時、老人となった俊(ジュン)は、標本箱に納められた潔(ジエ)に思い出の羽根をつけます。すると潔(ジエ)は蘇り、俊(ジュン)と三度の愛をかわします。しかし、潔(ジエ)はもはや人間界にとどまることなく、朱鷺の仲間と共に飛翔していくのでした。

 年老いた俊(ジュン)から大切にしていた羽根を託される学生たち。その学生たちが見つめる先には、このうえなく美しい朱鷺たちの群れが・・・。

佐々木 涼子(舞踊評論家)

一列に並んだ美しい鳥たち。一度見たら忘れがたい鮮烈な群舞である。その白いドレスを、ほのかな紅が彩っている。そう、朱鷺の群れだ!

 太古、青年は娘に変身した朱鷺と恋に落ちた。が、種の定めにあらがえず別れ別れに。近代に生まれ変わった二人は再会、しかし都会は朱鷺の生きる場所ではなく、二人は共に時の河を渡る。が、そこも文明の波に荒らされて、美しい鳥たちは絶滅の危機に瀕していた。またも別れの悲哀を飲む恋人たち。そして場面は一転、未来へ。博物館の朱鷺とそれを見守る老人。朱鷺は甦り、愛が燃え上がるが…。

 人間の男と鳥の化身という異種婚の説話に、過去から現在、未来への転生のロマン。加えて自然の荒廃と保護への警鐘を含んだ現代的なメッセージ性が、この舞劇『朱鷺』に強い説得力を与えて、観客を惹き込んでゆく。

 墨絵のように幻想的でモダンな美術もすてきだが、何よりも愛と哀しみのダンスが素晴らしい。優れたテクニックと妖艶な造形性は『白鳥の湖』の先を行く先端的なバレエとも見えるが、同時に中国の伝統的な身体表現の技法も取り込んでいて、他に類を見ない高度な舞台芸術、それが舞劇(ダンスドラマ)「朱鷺」である。

主催:MIN-ON

共催:
中国人民対外友好協会

後援:
中華人民共和国駐日本国大使館
   一般財団法人 日本中国文化交流協会
   公益社団法人 日本中国友好協会
   一般社団法人 日中協会

特別協賛:
東日印刷株式会社

協賛:
株式会社アルプ、
ローソンチケット、
株式会社サニクリーン
民音は、「音楽で人々の心と心を結ぶ」との創立理念を基に、音楽をはじめとした芸術運動を通して世界各国との文化交流を推進し、「SDGs(エスディージーズ/持続可能な開発目標)」の達成に向けて貢献して参ります。