構想より4年―。
中国最高のスタッフ陣と精鋭の舞踊集団が総力を結集し制作したオリジナル舞劇(ダンスドラマ)が誕生。
ジャパン・プレビューで話題沸騰の作品が、いよいよこの夏、待望の全国ツアー公演!!
2014年10月、東京で行われた舞劇「朱鷺」プレビュー上演会には、三笠宮家の彬子さまがご臨席され、安倍晋三首相、中国人民対外友好協会の李小林会長、中華人民共和国駐日本国大使館の程永華大使をはじめ、1500名の関係者が来場。舞劇「朱鷺」の美しく圧倒的な舞台は、日中友好の新時代を開く感動のステージとなりました。
中国最高のスタッフを揃え、世界の舞踊界も注目する上海歌舞団の精鋭たちが鮮烈な輝きを放ちます。目をうばう繊細かつ壮麗な舞踊の美しさ、そして、時空を越えたファンタジックかつドラマチックな舞踊(ダンスドラマ)に、必ずや魅了されることと思います。どうぞご期待ください。
古代――。ある村に天から舞い降りた七羽の朱鷺が、羽衣を脱ぎ捨て、仙女の姿となって、渓谷で戯れていました。その光景に驚いた村の青年・俊(ジュン)は、中でもひときわ美しい朱鷺の潔(ジエ)に心を奪われ、木の枝に掛かった美しい羽衣を持ち帰ろうとします。慌てて羽衣をまとって飛び去る朱鷺たち。しかし、自分の羽衣を奪われた潔(ジエ)は、羽衣を返して欲しいと俊(ジュン)に頼みます。はじめは、恐れや不安を覚えた潔(ジエ)でしたが、やがて、それは愛となります。
潔(ジエ)は、俊(ジュン)と一緒に暮らすようになりますが、ある晩、潔(ジエ)は、朱鷺の仲間たちと踊る夢を見て、人間界は自分の居場所ではないと悟り、泣く泣く俊(ジュン)の元を去ることを決意します。そして、眠る俊(ジュン)の傍らに、自らの羽根を一本残し、羽衣をまとって飛び立っていくのでした。
時の河を越えて、潔(ジエ)がやってきたのは高層ビルが立ち並ぶ近代。しかし、潔(ジエ)は都会に馴染むことができず、すっかり周囲から孤立してしまいます。そんな中、都会の移り変わりをレンズにおさめていたカメラマン・俊(ジュン)が、潔(ジエ)を介抱します。俊(ジュン)は、かつて潔(ジエ)が残した羽根を受け継いでいました。そして、潔(ジエ)の美しい住処を探し出すことを約束します。
俊(ジュン)と一緒に時の河を越えた潔(ジエ)ですが、もはや潔(ジエ)の故郷も、平和な世界ではありませんでした。文明化に伴い破壊されていく自然、そして次々に絶滅していく仲間たちの姿に、二人はショックを隠せません。俊(ジュン)は、思い出の羽根を取り出しますが、潔(ジエ)は、その羽根を再び俊(ジュン)に贈り返し、飛び立っていきます。
さらに時が流れ、博物館では、滅びゆく朱鷺のストーリーを学生に伝えています。
ある時、老人となった俊(ジュン)は、標本箱に納められた潔(ジエ)に思い出の羽根をつけます。すると潔(ジエ)は蘇り、俊(ジュン)と三度の愛をかわします。しかし、潔(ジエ)はもはや人間界にとどまることなく、朱鷺の仲間と共に飛翔していくのでした。
年老いた俊(ジュン)から大切にしていた羽根を託される学生たち。その学生たちが見つめる先には、このうえなく美しい朱鷺たちの群れが・・・。
“朱鷺”という鳥の名から、まず私たちの誰もが絶滅という言葉を連想するのではないだろうか。だが1981年に中国で7羽の朱鷺が発見され、99年には中国から雌雄2羽の朱鷺が日本に贈られたことは心温まるトピックスとして私たちの記憶に残ることになった。その後、繁殖に成功した日本では折りにふれてニュースとなるほど世の耳目を集めている。美しい朱色と白色をまとった独自の姿かたち、広い空を自由に飛翔する力をもつ鳥――朱鷺。その種族としての命脈が絶たれないことを願って、はかなげだが懸命に生きる様子が人々の想像力をもかきたててきたのである。
そんな“人類共通の思い”に応えるように、このほど上海歌舞団による舞劇「朱鷺」の上演が実現した。中国を代表する上海歌舞団は1979年の創設以来めざましい活躍を続け、日本でも「覇王別姫」などを上演し、スケールの大きな舞台で話題となった。その魅力は、中国ならではの民族舞踊、歌舞、声楽、器楽、そして西洋のバレエ、コンテンポラリー・ダンスまで身体表現のおおよそを統合したエネルギーとオリジナリティあふれる独自のスタイルにある。
今回の舞劇「朱鷺」のまず大きな特徴は、西洋のバレエと中国の舞踊がみごとに融合され、そこでは舞踊テクニック、プロポーション、表現力のすべてにおいて選び抜かれたダンサーたちが朱鷺をイメージした衣装で美しいダンスを披露する。美術・音楽とも溶け合って神秘的な味わいある空間を創出していることにある。
2幕仕立ての物語は、古代から始まる。渓谷に舞い降りた7羽の朱鷺が仙女の姿になり戯れていると、村の青年・俊(ジュン)が一際美しい朱鷺の仙女・潔(ジエ)に心奪われ、二人の間に愛が生まれる。しかしやがて、人間界が自分の居場所でないことを知ったジエは自らの羽を一本残して飛び立っていく。この一本の羽は時空を超え、近代の青年カメラマン、ジュンに受け継がれていく。第2幕ではビルの立ち並ぶ街で、ジュンとジエは出会うことになる。ジュンはジエのための住処を探し、時の河を超えてジエの故郷に渡るが文明化の勢いによって破壊がすすんでいた。ジュンが見せた一本の羽を受け取ることなく、ジエはまた飛び立っていく。
「つるの恩返し」や「鷺娘」、「白鳥の湖」。鳥の化身の物語に長い間私たちは親しみ、悲劇性にせつなさも抱いてきた。舞劇「朱鷺」では、朱鷺の化身たる仙女たちのたおやかで華麗なダンスに目を奪われ、ジュンとジエの恋の行方を案じる一方、居場所をなくしていく朱鷺の悲痛な叫びも聞こえてくる。だが、時が流れ、年老いたジュンが大切にしていた一枚の羽を若い学生たちに託す時、物語の先にある希望を見出すことができる。ここにきて、国境はあるけれども、大空はつながっていることをまさに実感するのである。